カンパニョーロコンポーネント使用チームの活躍を振り返ります。
先週末は、クラシックの女王こと パリ~ルーベ(2022/4/17)が開催されました。
またアルデンヌ・クラシック2戦目 ラ・フレーシュ・ワロンヌ(2022/4/20)が開催されました。
パリ~ルーベ
北のクラシックの締めくくり、そして『クラシックの女王』または『北の地獄』ことパリ~ルーベ(2022/4/17)が開催されました。
今年で119回目の開催となる歴史あるクラシックには多くの北のクラシックで勝利を狙うライダーが集結しました。このレースの特徴は何といっても全長54.8kmにも及ぶ石畳セクター(パヴェ)です。
レースは全257.2kmで前半100kmはアスファルト区間を進むため、後半150kmの3分の1がこのパヴェ区間となります。
このパヴェ区間は普段は農道としてトラクターが使用するための道ですが、握りこぶし大の石ブロックが敷き詰められており通常のライダーがこの石畳を走るのは困難なほど路面上が荒れております。ましてやここをロードバイクで走ること自体が通常では考えられないことで、自転車もこのレース専用のスペシャルバイクを用意したり、ライダーも相当の石畳走行技術が求められる難易度の高いレースです。
登場する石畳は距離や荒れ具合に応じてランク付けがされており、最高難易度の☆5セクターは全部で3か所設定されています。こちらは毎年の勝負所となる重要パヴェ区間となります。
最高難易度の☆5セクター『No.19 アランベール』、『No.11 モンサン・ペヴェル』、『No.4 カルフール・ド・ラルブル』はいづれも全長が2kmをこえる厳しい区間です。これらのパヴェ区間をいかにトラブルなく突破できるかが勝負の分かれ目となります。ちなみに名前の前の番号(No.)は数字が小さくなるにつれゴールに近づいていきます。
このレースは他のレースと比較して特殊すぎるため、説明したいことが多々ありますが全てを述べると前置きが長くなってしまうため、ここからはレースの振り返りをしたいと思います!
今年のパリ~ルーベはまず舗装区間で大きな動きがありました。序盤から激しい逃げに向けたアタック合戦の応酬が繰り広げられるなか、決定的な逃げグループができないままレースは40km消化します。残り210km地点の田園地帯ででイネオス・グラナディアーズが横風分断作戦を決行します。パリ~ルーベでは珍しい横風での分断で後ろの集団は特に必死に追う展開も見せず、どんどんと先頭集団との距離が開いていきます。
あっという間に1分以上の差がつき、後方集団にはワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)やマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)、シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)といった優勝候補の選手が多く残っていましたが、先頭集団にはイネオス・グラナディアーズと中心とした有力選手やミラノ〜サンレモ覇者 マテイ・モホリッチ(スロベニア、共にバーレーン・ヴィクトリアス)といったこの集団から優勝者が出てもおかしくない面々が揃っていたため、視聴者としてはかなり波乱の幕開けとなった印象でした。
残り100kmの最初の石畳区間に入ってもタイム差は約1分のままレースは進んでいきます。例年のごとくパヴェ区間では落車が頻発し、先頭集団に入っていた新城幸也選手も『No.27 サンピトン(距離1.5km/☆☆)』にて落車に巻き込まれてしまいます。
逃げが決まったのは残り110kmの舗装区間でした。モホリッチ、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)、トム・デヴリーント(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、ローラン・ピション(フランス、アルケア・サムシック)の4名の逃げは追走と1分弱の差で最初の☆5セクター『No.19トゥルエ・アランベール(距離2.3km)』に突入します。
アランベールではモホリッチが快調に石畳をこなす一方で、バッレリーニが痛恨のパンクで遅れます。追走集団はフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)を中心にアランベールに突入しますが、ここでファンアールトがホイールを大破するメカトラで遅れを喫します。即座にチームメイトからバイクを受け取りアランベールを抜けたため大きな後れにはならなかったのが救いでした。
ファンアールトがバイク交換の後にユンボ・ヴィスマがチームで攻撃を開始します。『No.13 オルシー(1.7km/☆☆☆)』でネイサン・ファンホーイドンク(ベルギー)がペースを上げるとメイン集団が絞られ有力選手中心の追走集団ができます。
ここから更にディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が飛び出すとファンアールトを中心に先頭集団へ向けペースが加速します。2つ目の最難関パヴェ『モンサン=ぺヴェル(距離3km/☆☆☆☆☆)』ではファンアールトが積極的に攻撃をしかけ、これにより追走集団は先頭から遅れた選手を含めた精鋭メンバーとなります。
モンサン=ペヴェルを抜けた後にファンバーレに追いついたファンアールトでしたが、ここでパンクにより再度バイク交換を強いられます。この時点で先頭の逃げはモホリッチとデヴリーントのみでしたが、ここのモホリッチもパンクに!逃げ切りの可能性も大いにあるパリ~ルーベだけにこれは痛いタイムロスでした。
10名程度の集団になった精鋭グループですが、このグループから『No.7 シソワン-ブルゲル(距離1,3km/☆☆☆)』にて再びモホリッチがイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)と共に先行します。そして単騎で逃げていたデヴリーントと後ろからファンバーレが追いつき4名となった先頭集団でついに最後の最難関パヴェ『No.4 カンファナン・ペヴェル(距離2.1km/☆☆☆☆☆)』に突入します。
ここで最も力を残していたのはファンバーレでした。ファンバーレの加速にモホリッチやランパールトは付いて行けず、ファンバーレはひとり独走状態になります。カンファナン・ペヴェルのクリアし残り10km地点でファンバーレとモホリッチ達の差は1分にまで広がり、この時点で勝利の可能性が見えてきます。最後まで気が抜けないパリ~ルーベですが、ここまでくれば難易度の高いパヴェはなくフィニッシュのヴェロドロームへ入っていきます。
表彰台争いの追走集団では『No.2 ヴィルム-エム(距離1,4km/☆☆)』でランパールトが観客と接触し落車してしまいます。更に優勝候補の筆頭のファンデルプールもこの日は優勝争いに絡めず脱落していきました。こちらの集団は残ったメンバーによるスプリント勝負に持ち込まれます。
ひとりフィニッシュのヴェロドロームへ入ってきたファンバーレはゆっくりと拳を振り上げて、勝利を喜びながら第119回パリ~ルーベ覇者に輝きました!
表彰台争いのスプリント勝負は流石の貫禄でファンアールトが制し2位に、3位にはこの春調子の良さを見せていたキュングが食い込みました!
ラ・フレーシュ・ワロンヌ
アルデンヌ・クラシック2戦目 ラ・フレッシュ・ワロンヌ(2022/4/20)が開催されました。
86回目大会のフレーシュ・ワロンヌの最大の目玉は何といっても、最大勾配26%に達する激坂『ユイの壁』こと『ミュール・ド・ユイ(1,300m/9.6%)』の頂上フィニッシュです。フレーシュ・ワロンヌはこのラストのユイの壁での力勝負になることが多く、純粋に激坂登坂力がある選手に勝機がありますが、いかに最後のユイの壁まで足を使わずにたどり着けるか、またユイの壁勝負になる前に逃げ切る展開に持ち込めるかが勝負の分かれ目となります。
レイアウトはベルギーのワロンヌ地方で開催され全長202.1km、獲得標高は約3,000mです。レース途中からはこのユイと『コート・デレッフ(2,100m/5%)』及び『コート・ド・シュラーブ(1,300m/8.1%)』の3つの上りが含まれた29kmのルートを周回するコースとなり、最後の3度目のユイの壁にて勝負が決します。
この日は逃げがなかなか決まらず、スタートから50km以上消化してようやく逃げグループが形成されました。しかしフレーシュ・ワロンヌは有力選手をユイの壁勝負に持ち込みたいチームが多いため、逃げグループで勝利を狙うことは他のレースよりも難易度が高いと言っても過言ではありません。ユイの壁勝負に持ち込みたくないチームを中心に逃げグループも形成されました。
逃げグループで力のある選手はダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック)、ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)、ピエール・ロラン(フランス、B&BホテルズKTM)などが入りました。メイン集団はイネオス・グラナディアーズやUAEチームエミレーツ、クイックステップ・アルファヴィニルなどがけん引を行いました。
まず残り約60km地点の1回目のユイの壁でトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が力なく遅れていきました。2回目の周回コースに入るとバーレーン・ヴィクトリアスを中心にけん引が行われましたが、メイン集団からも逃げ切りを狙いたい選手が度々アタックを仕掛けます。
残り約40km2回目のコート・ド・シュラーブでサイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が抜け出し約30秒差まで集団からタイムを稼ぎます。先行していた5名の逃げ集団の選手たちと合流します。そして周回コース3回目の最初の上りコート・デレッフでカーがアタックを仕掛け逃げ集団を更にふるいにかけます。
これに付いてこれたのはヴァランタン・フェロン(フランス、トタルエネルジー)のみで2人で30秒差を保ち先頭を走ります。メイン集団はツール・ド・フランス元王者ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がペースメイクを行います。メイン集団のペースが上がったため2つ目の上りコート・ド・シュラーブを前にで逃げていた2名を吸収しますが、シュラーブでコフィディスのチームワークによりレミ・ロシャス(フランス、コフィディス)を発射させます。
しかしこの動きはセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM)とマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)に追い抜かれてます。クラーウアナスンは一時20秒近い差をメイン集団から奪いますが、主力選手を残したメイン集団から逃げ切るには力が及びませんでした。
そして迎えた大一番、ユイの壁。逃げていたクラーウアナスンとファンセベナントを入り口で吸収しメイン集団が壁を駆け上がっていきます。まずはモビスターのエンリク・マス(スペイン、モビスター)が過去5度の勝利を誇るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を引き上げて先行します。後ろにはディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)がバルベルデの先行を許すまいとしっかりマークします。
優勝候補のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は前から6番手辺りにつけていましたが残りゴール約300mほどで失速し脱落。連覇のかかるジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)もこの日はキレがなく遅れていきます。
対照的に調子の良さを見せたトゥーンスはバルベルデの後ろからスパートをかけ、バルベルデをふるい落としにかかります。しかしバルベルデはこれをすかさずチェックし直前に横に並びかけます。しかし並びかけたタイミングでこれ以上は厳しいのか踏むのを諦めました。そして最後まで激坂を力強く踏み抜いたディラン・トゥーンスが自身初のラ・フレーシュ・ワロンヌでクラシック初勝利となりました!
今後のワールドツアーレース予定
モニュメントレースの1つ リエージュ~バストーニュ~リエージュ(2022/4/24)が開催されました。
また今週からはステージレース ツール・ド・ロマンディ(2022/4/26~5/1)がスイスで開催されます。
そして週末はドイツでワンデーレース エシュボルン・フランクフルト(2022/5/1)が開催予定です。
今後もレースを楽しみつつカンパニョーロコンポーネント使用チームを応援していきます!
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